銀行預金の相続手続
銀行預金の相続手続
銀行(信用金庫やJAバンクも同じです。)が、預金の名義人の死亡を知ったその時から、その口座はロックされ、お金は引き出せなくなります。
ロックされると、他人はもちろん、配偶者、子、その他の同居の親族であっても、通帳と印鑑またはキャッシュカードを持っていても、意味がありません。
遺族に手持ちの現金がないのに、定期預金のみならず日常の生活費を出し入れしている口座がロックされたら、ニッチもサッチも行かなくなることもあるのです。
こういう場合、仮に顔見知りの銀行マンさんに頼み倒してもラチはあきません。金融機関は、被相続人名義の預金は相続財産として、相続する人が判明するまで払い戻しに応じられない立場なのです。
なぜなら、相続人が誰だか解らないのに払い戻しに応じたら、紛争に巻き込まれる可能性もあり、最悪の場合、金融機関が賠償責任を負うかもしれないからです。
預金の払い戻しに必要な書類
銀行、信用金庫等では、預金等の相続にあたり、次のような書類の提出を要求することが多いようです。(実際の取扱いは、銀行、信用金庫等によって、かなり異なります。詳しくは、お取引金融機関にご確認ください。)
- 名義書換や払い戻しの依頼書(銀行等に備付)
- 戸籍や除籍の謄本(被相続人)
- 戸籍謄本(相続人)
- 預金通帳・証書・キャッシュカード・ローンカード・出資証券等
- 印鑑証明書(相続人)
- 遺産分割協議書(銀行等で様式を定めている場合が多い)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人や代理人の本人確認書類
上記にうち、用意するのに最も時間と労力を要するのが、被相続人の戸籍や除籍の謄本であり、これが、日本では唯一、法律上の相続人(法定相続人)を証明する書面なのです。
相続証明書については、「相続証明書」のページをお読みください。
手続が面倒、平日に動ける時間が無い、急いでいる、忙しいなどとお考えの方は、根来行政書士事務所に、一度、ご相談下さい。
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預貯金の相続の法律上のお話
預金の相続(払い戻し)手続については、上記のとおりですが、いささか混乱するかもしれませんてれども、念のため、法律上のことについて書いておきます。
遺言がなく開始した相続で遺産分割協議が未成立の場合でも、法定相続分に従って各相続人が銀行に払戻を請求できるというのが、現在までのところの裁判所の判断です。
金銭債権は分割債権であり、相続開始と共に法律上当然に分割され、各相続人はその相続分に応じた権利を承継する。(最判昭和29年4月8日、同平成16年4月20日)
上記の意味するところは、結局、銀行等の金融機関は共同相続人のうちの一人から払い戻しの請求を受けた場合、遺言がなく分割協議が整ったという事実がなくても、払い戻しに応じる必要があることになります。
けれども、実務上は、上記のとおり、金融機関は遺産分割協議書の提出を求めます。これは、法定相続分の確認には、それなりの技術的な問題があるからだと思います。
つまり、払い戻しの請求を現実に行っている人の相続分を金融機関で判断するのがイヤなのではということです。そこに間違いがあれば、やはり、金融機関は損害賠償の責任を負うことになりかねないからです。
しかし、真の相続人からその相続分についての払い戻しに金融機関が応じないことは、前記の最高裁判決に反しますので、相続人の一人が法定相続分の払戻請求訴訟を裁判所に起こしたときには、当該相続人は勝訴判決を得て払い戻しをしてもらうことができると思われます。
実際に、これに関して下記の判例があります。
被相続人が有していた預貯金払戻請求権は可分債権と解されるから、各共同相続人は、その法定相続分に応じて、権利を承継したものとして、その払戻請求権を行使できる。被告は本件預金に関する遺産分割協議が成立する可能性が存すると主張するが、すでに共同相続人の一人である原告が本件払戻請求の訴訟を提起しているのだから、本件各預金に関して遺産分割協議が成立する可能性があるとはいえない。また、相続開始後、共同相続人間における遺産分割協議が成立する前においては、金融機関の実務として、共同相続人全員の同意に基づいて、共同相続人全員に対して一括して預金の払戻を行うという商慣習は存しないし、顧客であった被相続人がかかる慣行に従う意思を有していたとは言えない。(東京地方裁判所平成18年7月14日判決)